こんにちは。土木設計歴30年、AI土木研究室です。
令和8年度の積算基準・標準歩掛等の改定内容が国土交通省から公表されています。工事(施工)側の話題は業界メディアでも取り上げられますが、橋梁定期点検業務の積算基準が大きく書き換わったことは、あまり知られていません。
今回の改定は、単なる歩掛の微修正ではありません。準拠する点検要領が平成31年3月版から令和6年3月版に切り替わり、それにともなって点検調書の様式体系ごと変わりました。さらに現地踏査には上位職種が新たに計上されるようになり、「公開成果品作成」という工程が新設されています。
この記事では、国土交通省が公表した新旧対照表(積算基準・標準歩掛等改定内容(4)調査,計画業務)をもとに、橋梁定期点検業務の改定点を整理します。記載した数値はすべて原典に記載のあるものです。
令和8年度改定の全体像|橋梁定期点検業務で変わった6点
まず全体像から押さえます。橋梁定期点検業務等積算基準(第4節 道路施設点検業務 4-2)について、今回の新旧対照表で確認できる変更は次の6点です。
- 適用範囲:準拠する定期点検要領が「平成31年3月」から「令和6年3月」に変更
- 業務委託料の構成:「定期点検」が「状態の把握(点検)」に改称、「公開成果品作成」を追加
- 点検調書の様式体系:参照する付録番号と様式番号が全面的に変更
- 標準歩掛:計画準備・現地踏査・協議資料作成・点検・調書作成・報告書作成のほぼ全工程で数値を改定
- 機械経費:「機械損料」が「機械損料又は賃料」に変更
- 安全費:「交通誘導員」が「交通誘導警備員」に名称変更
見積や工程計画に直接効くのは1・2・4です。順に見ていきます。
適用範囲が令和6年3月の橋梁定期点検要領に|様式番号が丸ごと変わる
改定後の4-2-1には、次のように書かれています。
【改正】
「橋梁定期点検要領(令和6年3月)国土交通省道路局国道・技術課」
および「橋梁における第三者被害予防措置要領(案)(平成28年12月)」
に基づき実施する橋梁定期点検業務に適用する。
【現行】
「橋梁定期点検要領(平成31年3月)国土交通省道路局国道・技術課」
および「橋梁における第三者被害予防措置要領(案)(平成28年12月)」
に基づき実施する橋梁定期点検業務に適用する。
ここが今回の改定の出発点です。積算基準が新しい点検要領に追いついた、という構図になります。
影響が大きいのは、点検調書の作成根拠となる付録番号と様式番号が入れ替わっている点です。業務内容(4-2-4)の記述を比較すると、次のようになっています。
■ 状態の把握(点検)の点検調書作成
【改正】付録-1 定期点検結果の記入要領
定期点検記録様式(その1)~(その7)
データ記録様式(その3-1)~(その3-4)
損傷程度の評価 = 付録-3 損傷程度の評価要領
【現行】付録-3 定期点検結果の記入要領
定期点検記録様式(その1)~(その5)
データ記録様式(その9)~(その13)
損傷程度の評価 = 付録-2 損傷程度の評価要領
記入要領の付録が「-3」から「-1」へ、損傷程度の評価要領が「-2」から「-3」へと入れ替わっています。第三者被害予防措置の点検調書についても、参照するデータ記録様式が(その9)~(その12)から(その3-1)~(その3-4)に変わりました。
実務上の注意点ははっきりしています。社内で使い回している点検調書のテンプレートやチェックリストが、そのままでは使えない可能性があるということです。様式番号を本文や目次に直書きしている資料は、契約日がいつの業務に対応したものかを必ず確認してください。
別途計上になる作業の範囲も変わった|健全性の診断と計測
点検調書作成の歩掛(4-2-5(6))には、どこまでが歩掛に含まれ、どこからが別途計上かを示す注記があります。ここも書き換わりました。
【改正】
本歩掛は、健全性の診断を含まない
定期点検記録様式(その1)~(その7)
データ記録様式(その3-1)~(その3-4)
の作成を行う歩掛である。
別途計上となるのは次の2つ。
(a) 健全性の診断を行い、定期点検記録様式(その8-1)~(その11)を作成する場合
(b) 洗掘または塩化物イオン量の計測を行い、
データ記録様式(その4-1)~(その5-2)を作成する場合
【現行】
本歩掛は、健全性の診断を含まない
定期点検記録様式(その1)~(その5)
データ記録様式(その9)~(その13)
の作成を行う歩掛である。
別途計上は、健全性の診断を行い
定期点検記録様式(その6)~(その8)を作成する場合のみ。
現行では別途計上の対象が「健全性の診断」だけでしたが、改定後は「洗掘または塩化物イオン量の計測」にともなう様式作成が、明示的に別途計上の対象として書き加えられました。
洗掘調査や塩化物イオン量の計測は、これまで「点検のついで」として扱われがちだった作業です。それが積算上も切り分けられたわけですから、発注図書にこれらの計測が含まれている場合は、見積時に別枠で計上できるかを確認する価値があります。
標準歩掛の改定|現地踏査に主任技術者・技師長が加わった
歩掛の改定のうち、構造的な変化があったのが現地踏査と関係機関との協議資料作成です。
職種欄に上位2職種が新設
新旧対照表の表頭を比べると、現行の職種欄は「主任技師/技師(A)/技師(B)/技師(C)/技術員」の5職種でしたが、改定後は先頭に「主任技術者」と「技師長」の2職種が追加され、7職種になっています。現地踏査(10橋当り)と関係機関との協議資料作成(10機関当り)の両方が対象です。
現地踏査は、点検計画の成否を決める工程です。近接手段をどうするか、交通規制が要るか、足元条件はどれか——ここの読み違いが、後工程の日数を丸ごと狂わせます。上位技術者の関与が積算上も認められた、と読むのが素直でしょう。
現地踏査の計上量は増、協議資料作成は減
職種ごとの値は表頭との対応が確定できない列があるため、ここでは「計」欄に記載された数値の合計で比較します(合計は筆者による計算です)。
■ 現地踏査(10橋当り)「計」欄の合計
定期点検 現行 10.0 → 改正 25.5
第三者被害予防措置 現行 8.0 → 改正 14.7
■ 関係機関との協議資料作成(10機関当り)「計」欄の合計
現行 14.0 → 改正 5.5
※ 各値は国土交通省公表の新旧対照表に記載された数値。合計は筆者による計算。
現地踏査は大きく増え、関係機関との協議資料作成は減っています。協議資料作成が減った理由は公表資料からは読み取れませんが、実態調査にもとづく見直しであることを踏まえると、「10機関」という単位で見たときの実作業量が想定より少なかったということでしょう。
橋梁点検では、河川管理者・鉄道事業者・警察など協議先が多い案件と、ほとんど協議が発生しない案件の差が極端です。注記には「機関数は、協議資料作成を行う機関にて計上する」とありますので、協議先の数を発注者と早い段階ですり合わせておくことが、これまで以上に重要になります。
計画準備・点検・調書作成の歩掛はどう動いたか
その他の工程についても、新旧対照表に記載された数値を合計で整理します。表頭との対応が確定できない列があるため、職種名は記載しません(合計はいずれも筆者による計算)。
工程(単位) 現行 → 改正 ※合計値
------------------------------------------------------------
業務計画書作成 100橋未満(1業務当り) 14.0 → 21.0
橋梁台帳等出力 100橋未満(1業務当り) 3.0 → 2.6
状態の把握(点検)(1日当り) 3.8 → 3.9
措置計画作成及び非破壊検査(1,000m2) 4.5 → 3.3
打音検査(1日当り) 3.5 → 2.7
定期点検の点検調書作成(1日当り) 2.7 → 3.0
第三者被害予防措置の調書作成(1日当り) 2.5 → 1.7
報告書作成(1日当り) 4.5 → 4.7
※ 100橋以上の橋梁台帳等出力・業務計画書作成は改定なし。
特徴的なのは、「計画・とりまとめ側」が増え、「現地の検査側」が減っていることです。業務計画書作成は14.0から21.0へ、定期点検の点検調書作成は2.7から3.0へ。一方、打音検査は3.5から2.7、第三者被害予防措置の点検調書作成は2.5から1.7へ下がっています。
これは、点検業務の負担が現場作業から書類作成側に移っている実態の反映と読めます。データベース登録や様式作成の比重が上がっている現在の点検業務の姿と一致します。
算定式そのものは据え置き
一方で、日数を求める算定式は変わっていません。見積のロジックを組み直す必要はない、という意味では実務者にとって朗報です。
■ 定期点検の点検日数 D(日/橋)
D = A1 / ((8 × Yb) × K1) + Dm
Yb = a × A1^b a = 5.62 、 b = 0.42 、最大作業量 170 m2/h
Dm = 0.1(日/橋)、1日 = 8時間
■ 定期点検の点検調書作成日数 D(日/橋)
D = a × A1 + b
A1 ≦ 300 m2 : a = 0.0037 、 b = 0.47
A1 > 300 m2 : a = 0.0016 、 b = 0.89 (D = 1.6日以上)
■ 報告書作成日数 D
D = 0.0001 × N^2 + 0.057 × N + 2.1 N:実橋梁数(橋)
■ 足元条件係数 K1
地上 1.0 / リフト車 0.9 / 梯子 0.9 / 点検車 1.2 / 足場 1.0 / 船上 1.2
算定式と係数が据え置きということは、Excelで組んだ見積シートは係数部分を触らず、歩掛の数値だけ差し替えれば対応できるということです。テンプレートを標準化しておくと、こうした改定時の対応が一気に楽になります。詳しくは数量計算書テンプレートの統一化で設計品質を上げる方法でも整理しています。
「公開成果品作成」が新設|マスキング作業が積算に乗る
今回の改定で新しく登場した工程が「公開成果品作成」です。業務委託料の構成(4-2-2)の直接人件費に追加され、業務内容(4-2-4(9))と標準歩掛(4-2-5(9))にも項目が起こされました。
【改正】(9)公開成果品作成
設計成果品を公開用資料とする必要がある場合に、
マスキング作業等により公開用成果品を作成する。
→ 公開成果品作成は「設計業務等標準積算基準書」による。
【現行】(追加) ※ 現行には該当項目なし
点検成果は、施設の管理情報や第三者被害に関わる情報を含みます。これを公開用に加工する作業が、これまでは積算上どこにも居場所がありませんでした。マスキング作業が「サービス」ではなく積算対象になったのは、実務者にとって素直に歓迎できる改定です。
なお、歩掛そのものは「設計業務等標準積算基準書」による、とされています。橋梁定期点検業務等積算基準の側には数値が書かれていませんので、実際の計上方法は同基準書の該当箇所を確認してください。
経費側の改定|交通誘導警備員・機械損料・熱中症対策
「交通誘導員」から「交通誘導警備員」へ
安全費の積算(4-2-8)で、「交通誘導員」という表記が「交通誘導警備員」に統一されました。呼称の変更ですが、道路トンネル定期点検業務等積算基準の側でも「交通誘導警備員A」「交通誘導警備員B」という区分が使われており、用語が揃った形です。
安全費率そのものは据え置きです。
表-1 安全費率(主として現道上)
大市街地 17.0 %
市街地甲 15.5 %
市街地乙・都市近郊 12.5 %
その他 13.5 %
(安全費)=(点検業務全体の直接人件費)×(安全費率)
ただし注記に一点、実務上ありがたい追記があります。地域が複数にまたがる場合の加重平均について、現行は「地域毎の区間(距離)を重量とし」とだけ書かれていましたが、改定後は「区間(距離:橋長)」と明記されました。何を重みに使うのかで迷う余地がなくなっています。
機械損料に「又は賃料」が明記
機械経費(4-2-7)のリフト車・橋梁点検車の運転単価表で、費目名が「機械損料」から「機械損料又は賃料」に変わりました。備考欄にも「建設機械等損料算定表(13)欄損料又は賃料」と追記されています。
注記には「機械の持ち込み、無償貸与又はリース等に応じて損料又は賃料を計上する」とあります。リースで点検車を手配するケースが実務では多いので、これも実態に合わせた整理といえます。
熱中症対策費用は「積み上げ計上」の道が開いた
同じ改定内容(4)には、洪水痕跡調査業務と水文観測業務(水文観測所保守点検・流量観測・水位流量曲線作成・水文資料整理)の間接調査費についても改正が入っています。
【改正】
間接調査費は … 熱中症対策費用(作業員個人に対する費用)である。
また、主に現場の施設や設備に対する熱中症対策に関する費用については、
対策の妥当性を確認の上、積み上げ計上を行うものとする。
積み上げ計上を行う場合は、熱中症対策費用(作業員個人に対する費用)と
重複がないことを確認するものとする。
【現行】
間接調査費は … 熱中症対策費用である。
ポイントは2つです。第一に、諸経費に含まれる熱中症対策費用が「作業員個人に対する費用」に限定されたこと。第二に、現場の施設や設備に対する対策費は積み上げ計上ができると明記されたことです。
ただし「対策の妥当性を確認の上」「重複がないことを確認する」という条件が付いています。積み上げる場合は、個人向けの対策費と何が違うのかを説明できる資料を用意しておく必要があります。令和8年度の設計業務側の改定については令和8年度 設計業務の積算基準はこう変わるにまとめていますので、あわせてご確認ください。
実務でどう効くか|いま確認しておきたい5点
最後に、この改定を受けて設計者・点検技術者が確認しておくべきことを整理します。
- 契約日を基準に、どちらの基準が適用されるかを確認する。改定内容は令和8年度版として公表されたものです。適用時期の詳細は各発注機関(地方整備局等)に確認するよう、公表資料にも明記されています。
- 点検調書のテンプレートの様式番号を棚卸しする。付録番号・様式番号が変わっているため、社内の雛形・チェックリスト・報告書の目次を洗い出しておきます。
- 洗掘・塩化物イオン量の計測が発注図書に含まれていないか確認する。含まれている場合、様式作成は別途計上の対象として明記されました。
- 協議先の機関数を早期に確定させる。協議資料作成の歩掛は下がっています。協議先が多い案件では、機関数の計上根拠を発注者と共有しておくべきです。
- 公開成果品作成の要否を着手時に確認する。必要な業務であれば、マスキング作業を積算に乗せられます。
積算作業そのものの効率化については、積算業務をAIで効率化する方法でも手順を紹介しています。基準改定のたびに歩掛を追いかける作業は、仕組み化しておくと負担が大きく下がります。
まとめ
令和8年度の橋梁定期点検業務等積算基準の改定について、要点を整理します。
- 準拠する点検要領が平成31年3月版から令和6年3月版に変更された
- 点検調書の付録番号・様式番号が入れ替わったため、社内テンプレートの見直しが必要
- 洗掘・塩化物イオン量の計測にともなう様式作成が、別途計上の対象として明記された
- 現地踏査と協議資料作成の職種欄に「主任技術者」「技師長」が新設された
- 現地踏査は増(計の合計 10.0→25.5、8.0→14.7)、協議資料作成は減(14.0→5.5)
- 打音検査・第三者被害予防措置の調書作成は減、業務計画書作成・点検調書作成・報告書作成は増
- 点検日数・調書作成日数・報告書作成日数の算定式と足元条件係数は据え置き
- 「公開成果品作成」が新設され、マスキング作業が積算対象になった
- 「交通誘導員」は「交通誘導警備員」に、「機械損料」は「機械損料又は賃料」に変更
- 熱中症対策費用は、現場の施設・設備に対するものを積み上げ計上できることが明記された
基準改定は、読まなければ損をするだけの話ではありません。今回のように「これまでサービスでやっていた作業が積算対象になる」改定は、知っているかどうかで見積の中身が変わります。原典は公開されていますので、該当する業務を受注している方はぜひ一度、新旧対照表そのものに目を通してみてください。
出典
- 国土交通省「設計業務等標準積算基準書および同(参考資料)」令和8年度「積算基準・標準歩掛等改定内容(4)」(訂正版)
https://www.mlit.go.jp/tec/content/001989908.pdf(2026年9月21日閲覧) - 国土交通省「設計業務等標準積算基準書および同(参考資料)」掲載ページ
https://www.mlit.go.jp/tec/gyoumu_sekisan.html(2026年9月21日閲覧)
※本記事に記載した数値・制度名・様式番号は、上記公表資料に記載されたものです。合計値および増減の比較は筆者による計算です。適用の時期等詳細については、公表資料の記載どおり各発注機関(地方整備局等)へご確認ください。
著者:AI土木研究室 / 土木設計歴30年。建設コンサルタントとしてインフラ整備に携わりながら、AI・自動化ツールの研究開発を行う。AI土木研究室(doboku-ai.jp)運営。


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