重力式擁壁の数量計算を自動化する方法【ExcelとAIで作業時間を90%削減】

こんにちは。土木設計歴30年、AI土木研究室のmasanoriです。

「擁壁の数量計算に丸1日かかる」「展開図から手入力するたびにミスが出る」——そんな悩み、私も長年抱えていました。

この記事では、重力式擁壁の数量計算を自動化して作業時間を85%削減した方法を、実体験をもとに解説します。ExcelマクロとAIツールを組み合わせることで、かつて1日がかりだった作業が30分以内に完了するようになりました。

重力式擁壁の数量計算、なぜ時間がかかるのか

重力式擁壁の数量計算は、一見シンプルに見えて実は複雑です。区間ごとに高さ(h1・h2)が変わるため、展開図を見ながら各断面の寸法を読み取り、Excelに手入力する必要があります。

現場でよく聞く問題点はこちらです:

  • 展開図(PDF)から寸法を目視で読み取るため、記入ミスが発生しやすい
  • 区間が多い場合(10区間以上)は入力だけで半日かかる
  • h1・h2の判定基準が人によって異なり、ダブルチェックが必要
  • 集計表(A調書)への転記ミスが後工程で発覚する
  • 変更設計のたびにゼロから入力し直す

これらは個人の注意力の問題ではなく、作業フロー自体の設計問題です。自動化で根本的に解決できます。

自動化の全体像:3ステップで数量計算書を完成させる

私が実践している自動化フローは以下の3ステップです。

ステップ1:展開図PDFから寸法を自動抽出

AutoCADから出力したベクターPDFは、実は座標データを含んでいます。このデータをAIツール(Claude等)で読み込ませると、各区間の高さ寸法・延長を自動で読み取ることができます。

キーポイントは補助線の判定です。擁壁展開図では、基準線より上の高さをh1、下をh2として区別しますが、AIはテキスト座標と線分の位置関係から自動で判定します。

抽出精度は区間の明確さによりますが、私の経験では通常の展開図で90〜95%の精度を達成しています。残り5〜10%は人が確認・修正する「数量確認シート」でチェックします。

ステップ2:数量確認シートで人がチェック

完全自動化は「間違えた数量がそのまま成果品になる」リスクがあります。そのため私のフローでは、AI抽出後に必ず人が確認する「関所」を設けています。

Excelの「数量確認シート」には:

  • 区間番号・h1・h2・延長の抽出値が一覧表示される
  • AIの信頼度スコア(高/中/低)が各値に付く
  • 信頼度「低」の値はセルが黄色でハイライトされる
  • 修正後に「確認完了」ボタンを押すと次ステップへ進む

このチェック作業は、慣れれば区間10本で10〜15分程度です。手入力と比べると圧倒的に速く、かつミスも見つけやすくなります。

ステップ3:数量計算書(B調書)を自動生成

確認済みの値を使って、Excelの数量計算書(B調書)を自動生成します。品目ブロックはお手本シートの書式を維持したまま、確定値だけを上書きします。

さらに、B調書の数量は数量集計表(A調書)にリンクで自動反映されるため、集計転記ミスがゼロになります。変更設計の場合も、展開図PDFを差し替えるだけで再計算が完了します。

実際の時間比較:手動 vs 自動化

私が実際に計測した作業時間の比較です(区間数:12区間の標準的な擁壁工)。

作業内容手動(従来)自動化後
展開図から寸法読み取り・入力120分5分(AI抽出)
数量の確認・修正30分15分(確認シート)
B調書(数量計算書)作成60分2分(自動生成)
A調書への集計転記20分0分(自動リンク)
合計230分(約4時間)22分

削減率は約90%。当初の「85%削減」という数字は保守的な見積もりで、慣れてくるとさらに短縮できます。

必要なツールと準備

この自動化フローの実現に必要なものをまとめます。

1. AutoCADからベクターPDFで出力

ラスター(画像)PDFではなく、ベクターPDFで出力することが必須条件です。AutoCADの「名前を付けて保存」→「PDFファイル(*.pdf)」を選択すれば、デフォルトでベクター出力されます。

既にラスターPDFしかない場合でも、OCRで処理する方法がありますが、精度は落ちます。可能であれば元のAutoCADファイルから再出力することをお勧めします。

2. CADDON_proの「数量計算書作成機能」

当サイトが開発したCADDON_proには、上記フローを実装した「擁壁展開図→数量計算書」の自動生成機能が含まれています。

Coworkモード(Claude AIと連携したデスクトップツール)上で動作し、PDFをドロップするだけで数量確認シートが生成されます。7日間の無料トライアルをご活用ください。

3. Microsoft Excel(Office 365推奨)

生成されるExcelファイルはxlsx形式です。Excel 2016以降であれば動作しますが、Excel for Microsoft 365(サブスクリプション版)が最も安定しています。

よくある質問

Q. 重力式以外の擁壁(もたれ式・ブロック積等)には使えますか?

現在のCADDON_proは重力式擁壁に特化しています。ブロック積擁壁については、区間延長の抽出は可能ですが、数量計算書テンプレートは別途用意が必要です。

Q. 監督職員への説明(成果品の出典)はどうすればよいですか?

AI抽出はあくまで「入力補助」であり、最終的な数値は人が確認・承認した値を使います。数量計算書の出典としては「AI補助+担当者確認」と記載するのが適切です。私は実際にそのように説明して、監督職員から問題なく受理されています。

Q. PDFの品質が悪い(スキャンした図面)場合はどうなりますか?

スキャンPDFの場合、ベクター座標が取れないため精度が低下します。この場合はOCRモードで処理しますが、信頼度スコアが「低」になる箇所が増えます。人によるチェック工数は増えますが、ゼロから手入力するよりは効率的です。

まとめ:自動化で設計思考の時間を取り戻す

重力式擁壁の数量計算自動化のポイントをまとめます。

  • AutoCADからベクターPDF出力が前提条件
  • AI抽出 → 人の確認(関所) → 自動生成、の3ステップで安全に自動化
  • 作業時間は従来比約90%削減(4時間 → 22分)
  • A調書への自動リンクで転記ミスをゼロに
  • 変更設計はPDF差し替えだけで再計算完了

「時間を生み出す」ことは、設計品質の向上と残業削減の両方につながります。30年間、手作業でやってきた私自身が、この自動化によって毎月20〜30時間の作業時間を取り戻しています。

まずはCADDON_proの7日間無料トライアルで、実際の展開図PDFを使って試してみてください。


著者:masanori / 土木設計歴30年。建設コンサルタントとしてインフラ整備に携わりながら、AI・自動化ツールの研究開発を行う。AI土木研究室(doboku-ai.jp)運営。

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