【中小コンサル向け】BIM/CIM原則適用への対応5ステップ

【中小コンサル向け】BIM/CIM原則適用への対応5ステップ 未分類

こんにちは。土木設計歴30年、AI土木研究室です。

BIM/CIMの原則適用が進み、「うちのような中小の建設コンサルタントはどこまでやればいいのか」という相談を受ける機会が増えました。高価なソフトを一式そろえて、若手を専任にして、社内標準をゼロから作って……と考えると、どうしても腰が引けてしまいます。

しかし実際に手を動かしてみると、BIM/CIM対応で本当に必要なのは、大がかりな投資よりも「どこまでを3次元でやるかを決めること」でした。この記事では、中小規模の設計事務所がBIM/CIM原則適用に現実的に対応するための手順を、5つのステップに分けて整理します。従来の2次元設計の資産を捨てずに移行する方法を中心にお話しします。

ステップ1:BIM/CIM原則適用で「求められている範囲」を正確に把握する

最初にやるべきは、ソフトの選定でも研修でもなく、発注図書を読み込むことです。BIM/CIMと聞くと「すべての構造物を3次元でモデル化しなければならない」と身構えがちですが、実務で求められる内容は業務ごとに大きく異なります。

特約仕様書や業務計画書で確認すべきポイントは次の通りです。

  • 3次元モデルを作成する対象範囲(全線か、特定構造物のみか)
  • モデルの詳細度(LOD)がどの水準で指定されているか
  • 納品するデータ形式(ネイティブ形式か、IFC等の中間形式か)
  • 属性情報をどこまで付与する必要があるか
  • 数量算出を3次元モデルから行う必要があるかどうか

ここを曖昧にしたまま作業を始めると、必要のない部分まで作り込んで工数が膨らみます。逆に、詳細度の指定を読み違えて作り込みが足りず、後半でやり直しになるケースもあります。発注者との協議記録に、対象範囲と詳細度を明文化して残しておくことが、結果的にいちばんの工数削減になります。

ステップ2:2次元設計の資産を活かせるワークフローを組む

中小のコンサルタントがつまずきやすいのが、「BIM/CIM対応=これまでの2次元CADの仕事を捨てること」だと考えてしまう点です。実務ではむしろ逆で、平面図・縦断図・横断図といった2次元の成果を土台に3次元モデルを起こしたほうが、確実で早い場合が少なくありません。

線形と横断からモデルを起こす基本の流れ

道路や河川の設計であれば、まず線形データを整え、次に横断構成を定義し、そこにサーフェスを組み合わせるという流れが基本です。すでにAutoCADなどで作成した線形や横断の情報は、そのまま3次元化の入力データになります。ゼロから3次元でモデリングするのではなく、既存の2次元成果を「入力データ」として位置づけ直すだけで、心理的なハードルはかなり下がります。

図面の作り方そのものを見直す

3次元化を前提にすると、2次元図面の描き方も変わります。レイヤーが整理されていない図面、寸法が図形と連動していない図面は、3次元化の際に手戻りの原因になります。この機会に社内の作図ルールを整えておくと投資対効果が高いので、詳しくは土木CAD図面のレイヤー管理ベストプラクティスもあわせてご覧ください。

ステップ3:数量算出との連携を早い段階で決めておく

BIM/CIM対応で最も判断に迷うのが数量の扱いです。3次元モデルから数量を自動算出できれば理想的ですが、現実には設計変更のたびにモデルを修正し、そこから数量を再出力する運用が回るかどうかは、体制次第です。

私の経験では、次のように役割を分けるのが現実的でした。

  • 3次元モデル:形状の確認、干渉チェック、関係者との合意形成に使う
  • 数量計算書:従来どおりExcelを軸にして、根拠を追跡できる形で管理する
  • 両者の整合:主要な構造物の代表数量だけをモデルと突き合わせて検証する

すべてをモデル起点にしようとすると、設計変更が発生した瞬間に破綻します。まずは「モデルは合意形成のため、数量は計算書で担保する」と割り切り、整合確認のポイントだけを決めておくほうが、業務全体は安定します。数量計算書の自動化についてはCADDON_proで扱っている仕組みも参考になるはずです。

ステップ4:ソフトウェアと社内環境は「小さく始めて」広げる

BIM/CIM対応の相談で必ず出るのがソフトの話です。ここで全社一斉導入に踏み切ると、使いこなせないライセンスを抱えて費用だけが残ります。おすすめは、次の順序で段階的に広げる方法です。

  • 第1段階:ビューア系ソフトで、他社が作成したモデルを閲覧・確認できるようにする
  • 第2段階:1業務・1担当者に限定して、実案件でモデル作成を試す
  • 第3段階:試した担当者が手順書を作り、2〜3名に展開する
  • 第4段階:社内標準として作業手順とファイル命名規則を確定する

あわせて見落とされがちなのが、PCとネットワークの環境です。3次元モデルの取り扱いでは、グラフィック性能とメモリ、そして大容量ファイルを共有するためのストレージが作業速度を大きく左右します。ソフトのライセンス費だけを見て予算を組むと、動作が遅くて誰も使わなくなるという結果になりがちです。

ステップ5:属性情報と納品ルールを社内で統一する

3次元モデルの価値は形状そのものよりも、付与された属性情報にあります。構造物の名称、材料、施工年度、管理者といった情報が整理されていれば、そのモデルは維持管理段階でも使えます。逆に属性が空のモデルは、見た目が立派でも「絵」で終わってしまいます。

社内で最低限そろえておきたいルールは次のとおりです。

  • モデルの分割単位(工区別か、構造物別か)
  • オブジェクトの命名規則と、図面・数量計算書との対応関係
  • 必須で入力する属性項目のリスト
  • バージョン管理の方法(誰がいつ更新したかを追える形にする)
  • 納品前チェックリスト(形状・属性・データ形式の3点確認)

ここを個人任せにすると、担当者が変わった途端に引き継げなくなります。ルールは最初から完璧である必要はありません。1業務ごとに気づいた点を追記していけば、2〜3件を経る頃には十分に実用的な社内標準になります。

まとめ:BIM/CIM対応は「投資」ではなく「段取り」の問題

BIM/CIM原則適用への対応というと、どうしても設備投資や人材確保の話になりがちです。しかし実際に業務を回してみると、成否を分けるのは求められる範囲を正確に把握することと、2次元の資産をどう活かすかという段取りの部分でした。

もう一度、5つのステップを整理します。

  • 対象範囲と詳細度を発注図書で確認し、協議記録に残す
  • 2次元設計の成果を入力データとして活かすワークフローを組む
  • 数量はモデルに全部委ねず、計算書で担保しつつ整合点を決める
  • ソフトと環境は1業務・1担当者から小さく始めて広げる
  • 属性情報と納品ルールを社内標準として少しずつ育てる

30年この仕事を続けてきて感じるのは、道具が変わっても設計の本質は変わらないということです。新しい仕組みを恐れる必要はありませんが、振り回される必要もありません。自社の業務に必要な範囲を見極めて、そこから一歩ずつ進めていけば十分に間に合います。

この記事が、これからBIM/CIM対応に取り組む方の判断材料になれば幸いです。


著者:AI土木研究室 / 土木設計歴30年。建設コンサルタントとしてインフラ整備に携わりながら、AI・自動化ツールの研究開発を行う。AI土木研究室(doboku-ai.jp)運営。

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